ホールフーズプラントベースの脂質ー飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を避け、植物性食品から オメガ 3 を摂取

Translate:

三大栄養素のうち、タンパク質と炭水化物について書きましたが、今回は最後の栄養素、脂質について、ホールフーズプラントベースダイエットの見地から書いてみようと思います。あまりいいイメージのない脂質ですが、私たちには欠かせない食品成分です。脂質の場合にも、タンパク質や炭水化物同様、摂るべきものと避けるべきものがあるので、食品を選ぶ際、また調理の際には注意が必要です。

目次

脂質とは

脂質とは、脂肪と油を合わせた呼称です。室温で固体の脂肪は主に動物由来、逆に、室温で液体の油は主に植物由来です。脂質は、エネルギー源として働くほか、細胞膜やホルモンの構成成分として働いたり、脂溶性ビタミンの吸収を助けたりと、さまざまな重要な役割を担っています。

脂質の特徴の一つは、高カロリーであることです。タンパク質と炭水化物のカロリーが 1 g当たり 4 kcal であるのに対し、脂質は 9 kcal です。これは、エネルギー源として効率がよい一方、日本を含めた先進国では、摂りすぎによる肥満その他の生活習慣病が問題視されています。 厚生労働省が発表する日本人の食事摂取基準(2020 年版)によると、2016 年国民健康・栄養調査による脂質の摂取量は、年齢によりばらつきがありますが、18 ~ 64 歳の成人男性で 1 日約 61~64 g(摂取エネルギーの 25.9~28.1%)、女性で約 52~54 g(摂取エネルギーの 28.4~30.3% )です。目標値としては、1 歳以上の全年齢の男女で、 摂取エネルギーの 20~30%が示されています。

一方、ホールフーズプラントベースダイエットの T. コリン・キャンベル博士は、脂肪摂取量について、総摂取カロリーの約 10~15 %を勧めています。これは 1 日の摂取カロリーが 2500 kcal の人では約 28~42 g、1800 kcal の人では約 20~30 gということになります。また、心臓病その他の疾患リスクが高い場合は、さらに低い値、総摂取カロリーの 10 %以下が適切とされています。心臓病患者を食事で治療するコールドウェル・エセルスティン博士の研究では、10 %未満の脂質摂取で大きな成果を上げています。生活習慣の改善により、さまざまな病気の治癒を目指すディーン・オーニッシュ博士のプログラムでも、同じく 10 %未満となっています。 10 %未満という数値を達成するには、動物性脂肪はもちろん、アボカドやココナッツ、オリーブなどの脂質を多く含有する植物性食品の摂取も控えなければなりません。もちろん、健康な人であれば、ここまで制限する必要はありませんが、それでも 10~15 % ということなので、厚生労働省の推奨値 20~30% よりかなり低く抑える必要があります。

ちなみに、 T. コリン・キャンベル博士によると、脂質を総摂取カロリーの約 10~15 %、タンパク質を 8~10 %、残りを炭水化物とするのが適当ということです。イメージしやすいように、おおまかな比率を円グラフにしてみました。

脂質の種類

私たちが食事から摂取する脂質は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の 4 種類に分けられます。飽和脂肪酸は、肉類や乳製品などの動物性食品とココナッツオイルやパーム油などのトロピカルオイルに多く含まれています。これは人間が体内で合成できる脂肪酸です。一価不飽和脂肪酸としては、オレイン酸がありますが、これはオリーブオイルやアボカドオイルなどに多く含まれます。これも体内で合成することができます。一方、多価不飽和脂肪酸のオメガ 6 系脂肪酸(リノール酸など)とオメガ 3 系脂肪酸(α-リノレン酸など)は、体内で合成できないことから、必須脂肪酸とよばれています。 オメガ 6 系のリノール酸は大豆油、コーン油、ゴマ油、紅花油、ヒマワリ油などに多く含まれます。 オメガ 3 系には、魚介由来の DHA と EPA、植物由来の α-リノレン酸 があります。α-リノレン酸は、エゴマ油や亜麻仁油(フラックスシードオイル)に多く含まれます。トランス脂肪酸は、油脂を精製・加工する際に生じる物質で、マーガリンやショートニングに多く含まれます。

脂質の種類

避けるべき脂質

上記のように、ひとことで脂質と言ってもいろいろな種類があります。このうち、まず避けた方がいいものは、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸です。飽和脂肪酸は、摂りすぎにより、LDL コレステロールや中性脂肪を増やし、心臓病のリスクを高めることが知られています。また、トランス脂肪酸は、LDL コレステロールを増やし、HDL コレステロールを減らすことから、同様に心臓病のリスクを高めます。世界保健機関(WHO)や厚生労働省は、トランス脂肪酸の摂取を総摂取エネルギーの 1%未満に抑えることが望ましいとしています。

飽和脂肪酸は主に動物性食品に含まれるため、肉類、魚介類、乳製品、卵などをできるだけ摂取しないことが大切です。ただし、動物性食品を一切摂取しないヴィーガンであっても、植物性のココナッツオイルやパーム油は、飽和脂肪酸を多量に含むため、注意が必要です。ホールフーズプラントベースダイエットでは、精製油を基本的に摂取しないので、ココナッツオイルなども推奨されません。

トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングをはじめ、それらを使用した多くの加工食品に含まれます。市販のパンやケーキやクッキーなどは、かなりの確率でマーガリンやショートニングが使われているので、加工食品をよく食べる人は、トランス脂肪酸を避けるのは難しいかもしれません。また、トランス脂肪酸を含まないのマーガリンなども売られるようになりましたが、トランス脂肪酸が含まれていないからと言って体にいいかというと、決してそういうわけではないので、やはり避けた方が賢明です。過度に精製・加工されていること、カロリーが高いことには変わりありません。

オリーブオイルは摂るべき?

オリーブオイルは、健康によいと言われていますが実際はどうなのでしょうか?

オリーブオイルは、オレイン酸を多く含みます。オレイン酸は、血液中の LDL コレステロールを低下させる効果があると言われていますが、これは、地中海式ダイエットの健康の秘訣とも考えられています。オレイン酸は、一価脂肪酸ですが、これは、必須脂肪酸ではなく、体内で合成することができます。

オリーブオイル(エクストラバージンオリーブオイルに限る)を食事に含めるべきか否かについては、ホールフーズプラントベースダイエットを支持する医師や研究者間でも意見がわかれるところですが、共通しているのは、心臓病や糖尿病の治療を目的とする場合、また体重を減らしたい場合には、脂質全体の摂取を最低限に抑える必要があるので、やはり避けた方がいいということです。

ただし、脳の健康を考えた場合には、オリーブオイルは適度に摂取した方がいいかもしれません。アルツハイマー病などの認知症とライフスタイルの関係について研究している神経学者のディーン・シェルザイ博士、同じくアイーシャ・シェルザイ博士は、エクストラバージンオリーブオイルについて、他の健康上の理由で避けるべき人はいるものの、認知症という観点では有益であろうとの見解を示しています。この場合も、高温での調理には使わないようにとのことです。ちなみに、シェルザイ博士らは、高温での調理には、熱に強いアボカドオイルを使用するそうです。

オメガ 6 系とオメガ 3 系必須脂肪酸

必須脂肪酸は、人間が体内で合成することができず、食事から摂取する必要がある脂肪酸ですが、これはオメガ 6 系とオメガ 3 系に分類されます。

オメガ 6 系脂肪酸で日本人が主に摂取しているのはリノール酸です。大豆油やコーン油などの植物油に多く含まれています。オメガ 6 は必須脂肪酸ではありますが、揚げ物をはじめ、油を使用した加工食品を食べることの多い現代の食生活では、過剰摂取が問題になっています。

オメガ 6 系脂肪酸は炎症性で、白血球を活性化し、血液を固まりやすくします。逆に、オメガ 3 系は抗炎症性で、炎症を抑え、血液を固まりにくくします。どちらも身体にとっては必要な作用ですが、オメガ 6 とオメガ 3 の摂取量のバランスが崩れることで健康に悪影響が出ます。オメガ 6 系脂肪酸の摂取が過多になると炎症性疾患、自己免疫性疾患、動脈硬化などを引き起こす可能性があります。アトピーや花粉症などのアレルギーも、オメガ 6 系脂肪酸の比率が高いことが原因の場合があります。オメガ 3 とオメガ 6 の比率は、理想的には 1:2 ですが、現代の日本人の食生活では、1:10 またはそれ以上にオメガ 6 寄りに傾いているということです。ホールフーズプラントベースダイエットを実践し、精製された油を使用していなければ、オメガ 6の摂取量はそれほど多くならないため、あまり心配はいらないようですが、オメガ 3 系は、やはり意識して摂取したほうがよさそうです。

オメガ 3 系脂肪酸には、植物由来のα-リノレン酸(ALA)と、魚介類由来のエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)があります。α-リノレン酸は、体内で EPA と DHA に変換されるため、食事から摂るべきなのはα-リノレン酸のみといえます。EPA と DHA は、魚介類を摂取すると容易に摂ることができるのですが、残念ながら、魚には健康に害を及ぼす物質も多く含まれています。まず、魚には、飽和脂肪酸とコレステロールが多く含まれます。これらは、心臓病のリスクを高めます。さらに、魚は、PCB、ダイオキシン、水銀などで汚染されています。これらは、神経、肝臓、消化器、皮膚などを損傷したり、免疫系に悪影響を及ぼす危険性があります。

ところで、魚に EPA と DHA が含まれるのは、魚が海藻を食べるからだそうです。それなら、わざわざ魚を食べなくても、直接海藻を食べればいいというのも納得ですね。α-リノレン酸は、海藻以外には、エゴマ、亜麻仁(フラックスシード)、チアシード、クルミなどに多く含まれます。

α-リノレン酸を体内で EPA および DHA に変換する能力は、ヴィーガンなど、魚から EPA および DHA を摂取していない人では高くなるようです。しかし、人によって変換率に差があるので、一度血液を調べてもらうと安心かもしれません。そして、どうしてもサプリメントが必要な場合は、魚油ではなく海藻ベースのものを摂取するという選択肢もあります。

まとめ

脂質も他の栄養素と同様に身体には必要なものですが、現代の食生活では、どうしても摂取過剰になりがちです。

なかでも、健康への被害が特に心配な飽和脂肪酸とトランス脂肪酸については、摂取を最低限に抑えたいものです。このためには、動物性食品(肉類、魚介類、乳製品、卵など)と加工食品(マーガリン、ショートニングなどを含むパンやお菓子など)をできるだけ食べないことが最も効果的です。また、ホールフーズプラントベースダイエットでは、これら以外に、ココナッツオイルやパーム油なども、飽和脂肪酸が多いことから避けた方がよいとされています。

エクストラバージンオリーブオイルについては、心臓病や糖尿病などのリスクが高くなければ、脳の健康のために適度に摂取した方がいいかもしれません。

必須脂肪酸は、食事からの摂取が必要ですが、オメガ 6 系が過剰になりがちなので、揚げ物はもちろん、油を使用した加工食品などもなるべく控えたいものです。反対に、不足しがちなオメガ 3 系必須脂肪酸は、積極的に摂取する必要があります。このとき、飽和脂肪酸、コレステロール、汚染物質などによる健康被害の恐れがある魚介類は避けて、植物性食品から α-リノレン酸を摂取するとよいでしょう。私も、 α-リノレン酸を多く含む、亜麻仁(フラックスシード)、チアシード、エゴマ、クルミ、海藻などは、毎日必ず摂取しています。 α-リノレン酸は熱に弱いので、なるべく加熱せずに摂取することが大切です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次
閉じる