2 年半以上続けているホールフーズプラントベース (WFPB、詳しくはこちら)の食事からどれだけの栄養素を摂取できるかを検証しています。前回はいつも通りの食事を 1 週間記録した結果を記載しましたが、今回は過不足部分に気をつけた改善後の記録と、気づいたことなどをつづります。
前回の記事はこちら↓
記録の基準(ホールフーズプラントベースバーション)
最初の 1 週間と比較するため、「記録方法」、「使用アプリ」、「栄養素摂取量の基準」は前回と同じです。
わかりやすいように、「栄養素摂取量の基準」のみ以下に再度記載します。
1 日に摂取するカロリーの基準値:1800 kcal
<主要栄養素 + 塩分の摂取量基準>
タンパク質:50g (1
(1「ホールフーズプラントベースダイエットのよくある疑問ー動物性食品を食べずに、タンパク質はとれるのか?」の回に記載されているタンパク質の必要量を使用。
脂質:30g(総摂取カロリーの 15 %)以内
ホールフーズプラントベース ダイエットでは 10〜15 %が推奨されていることが多いのですが、脂質を特に厳しく制限すべき健康上の理由がないため、上限値を採用しました。厚生労働省が発表する 2020 年版日本人の食事摂取基準によると、脂質の 1 日の摂取目標量はカロリーの 20〜30 %となっているので、その下限以下の量です。
炭水化物:332.5g(カロリーの 65〜80%) (2
食物繊維:40g (2
糖質:292.5g (2
(2 1 日に摂取するカロリー基準量 1800 kcal から、上記の脂質と炭水化物の摂取基準量を引いた値です。これは、「よい炭水化物、悪い炭水化物とは? ホールフーズプラントベースダイエットで摂る炭水化物。」の回に記載されている炭水化物の摂取量に準じています。食物繊維は、ホールフーズプラントベースで推奨される 40g を基準とし、炭水化物全体の摂取量基準からこの 40g を引いた 数値を糖質の基準とします。
塩分:5 g 未満(WHO の推奨値)
<ビタミン・ミネラルの摂取量基準>
使用する健康管理アプリ「カロミル」で、自分の身長や体重などを入力して算出された、以下の値を基準値とします。
ビタミンA:700ug
ビタミンD:8.5ug
ビタミンE:6.0mg
ビタミンB1:1.10mg
ビタミンB2:1.20mg
ビタミンB6:1.10mg
ビタミンB12:2.4ug
ビタミンC:100mg
カリウム:2600mg
カルシウム:650mg
マグネシウム:290mg
鉄:11.0mg
結果
前回の 1 週間の記録をもとに、足りない栄養素を意識して摂取し、摂りすぎの栄養素を控えた結果、必要な栄養素が全体的にバランスよくとれていて「ホッ」としました。(^_^)
主要栄養素+塩分と微量栄養素(ビタミン・ミネラル)に分けて、改善前と改善後のそれぞれ 7 日間のグラフを上下に並べて比較してみました。
主要栄養素 + 塩分
棒グラフの中央 50 %に近いほど、基準値に近いことを意味します。50 %を超えると基準値を超え、 50 %未満であれば基準値より少ないということです。
<改善後>
<改善前>
タンパク質
動物性食品を摂取しないことで、まず心配されるのがタンパク質! 私も食生活を変えた時は、「タンパク質は十分摂れますか?」と心配してくださる方がいらっしゃいました。改善前後とも厚生労働省が発表する 2020年版日本人の食事摂取基準値以上のタンパク質を摂取していることがわかりました。
脂質
改善前は、精製した油は使っていなかったので、それ以上に特に気にすることなく、クルミ、カシューナッツ、アーモンドなどのナッツ類を「おやつ」として食べたり、ピーナッツバター(自家製)を果物やデーツと一緒に食べたりして、ついつい食べ過ぎていました。
厚生労働省の目標量範囲にはおさまっていましたが、ホールフーズプラントベースの基準を大幅に上回っていたので、ピーナッツバターを含めたナッツ類の摂取を控えることで、基準値内に抑えることができました。ナッツの代わりの「おやつ」として、黒豆(黒大豆)なら不足しがちがカルシウムも摂取できて一石二鳥と思い、デーツと一緒に煮て食べていたのですが、カロミルに記録してみると、思った以上に脂肪を摂取していることに気付きました。大豆の脂肪含有量は、クルミなどのナッツやピーナッツバターと比べると少ないものの、豆類の中でも群を抜いています。とはいえ、大豆やナッツは、各種栄養素を含むスーパーフードなので、量をわきまえて食べることで、栄養のバランスをとることができました。また、おやつをたくさん食べたいときは、栄養価が優れているだけでなく、甘くて満足感が得られ、腹持ちもいい、サツマイモが一番だとわかりました(^_^) 長寿と健康で知られる沖縄のブルーゾーンエリアの方々の主食がサツマイモであったことにも納得できます。
炭水化物(糖質、食物繊維)
改善前後で特に大きな変化はありませんでした。食物繊維の摂取基準値は、厚生労働省の目標値の倍に設定しているにもかかわらず、特別意識しないで、糖質を抑えながら食物繊維を十分に摂取できていました。これはまさしく、精製・加工されていない植物性の食品を食べるホールフーズプラントベースダイエットの特徴で、合点がいく結果となりました。
塩分
今回の結果は、私にとっては意外な結果でした。設定した数字は世界保健機関(WHO)のガイドラインで、厚生労働省の定める数値より 2g 低い数値でしたが、どちらも下回っていました。
甘いものよりも塩分のきいた食べ物を好む私にとって、塩のない食生活は非常に考えにくく、正直この食生活をはじめた時は塩分を控えることが難しかったです。私の場合、醤油や味噌よりも塩、特にシーソルトが好きで、料理をする時にもよく使っていました。例えば、パスタや野菜を茹でるときにも必要以上に使っていたように思います。それゆえに、ずっと正常だった血圧も年齢を重ねていくうちにいつかは上がるのではなかと不安に思っており、減塩の必要性は感じていました。ホールフーズプラントベースのレシピを見ながら、塩が少なくてもおいしく感じるように、ハーブ、酢、スパイスなどを利用したり、料理中にはできるだけ塩を使用せず、食卓で塩分(醤油、味噌、塩麹、自家製のドレッシングなど)を少量ふりかけて味の調整をするなど工夫して、塩分を抑える努力をした結果、以前のように塩を入れなくてもおいしいと思えるようになりました。おいしく食事ができなければ、楽しくないですし、当然続きません。特に健康上の問題がない限り、塩分を完全に排除しなければならないという食事法ではないので、これからも過剰な塩分を摂取しないよう意識しながら、素材の味を引き立てる程度という気持ちで塩分を使うよう心がけ、毎日の食事をおいしくいただきたいと思っています。
ビタミン・ミネラル
<改善後>
<改善前>
ビタミン A
改善前は少々不足していましたが、意識して色の濃い野菜を食べることで改善されました。特にニンジンは安価でいつでも手に入り、いろいろな料理に使えるので、ビタミン A を豊富に含む食材として大活躍しています。記録をみてみると、その他のビタミン A 源は、ミカン、カボチャ、タアサイなどの秋冬野菜、畑で収穫したケール、カラシナ、大根の葉、ほうれん草、パセリ、西洋ふだん草(スイスチャード)などでした。
ビタミン D
今回の食事からの摂取は、すべてキノコ類からです。食事だけに頼ることは非常に難しい栄養素ですが、日光を浴びることで体内で生成することができます。そのため、足りない分は、晴れた日の畑仕事などで日光を浴びることで十分に生成していると思いますが、機会があれば、実際に十分なビタミンDが摂取できているかどうか、血液検査で確認したいと思っています。
ビタミン B2
改善前は少々不足していたビタミン B2 は、豆類を毎日たくさん食べることで改善されました。記録を見ると、その他、緑茶、キノコ類、緑黄色野菜から摂取していました。特に緑茶は、毎日マグカップ2杯程度は飲んでいるので、ビタミンB2 摂取量の 1/5 を占めました。
カルシウム
ビタミン B2 同様、豆類、緑黄色野菜、サツマイモなどを多めに食べることで改善されました。改善する際に気付いたことは、大豆(豆腐、豆乳、黒豆煮など)やナッツは、カルシウムが多く含まれていてよいのですが、食べすぎると脂肪が摂取過剰になってしまうということです。そのため、色の濃い野菜(小松菜、大根の葉、カラシナ、春菊など)やサツマイモを特に意識して食べました。
今回は、使用健康管理アプリで自動的に計算された値(650mg)を 1 日の摂取基準値としましたが、推奨量は、国や団体によって大きく異なります。例えば、世界保健機構(WHO)の推奨量は 500 mg、英国は 700 mg、アメリカは 1000 mg です。WHO の推奨量であれば、改善前の数値でも十分なカルシウムが摂取できていることになります。骨を強く保つためには、カルシウムの摂取だけでなく、運動とビタミン D が欠かせないとよく聞くので、カルシウムの値だけに注目するのは間違っているのかもしれません。また、一緒に食べるもの、体質、健康状態などによっても吸収率は異なるはずです。さらに、カルシウムの過剰摂取も健康上の問題を引き起こします。そのあたりをどのように理解したらよいのか、また調べてみたいと思います。
ビタミン B12
ビタミン B12 は、動物も植物も体内で合成することができず、これができるのは細菌のみと言うことで、サプリメントを週 1 回摂取しているので変化はありませんでした。
アメリカ国立医学図書館に掲載されている記事に、2014 年の時点で、ベジタリアンにとって最も適切なビタミンB12 を含む植物由来の食品は「海苔」である、という記載がありました。さらに、海苔にはオメガ3系必須脂肪酸が含まれているとのこと。また、この記事には「市販の椎茸」にも B12 が含まれるが、含有量には大きなばらつきがある旨の記載がありました。いずれにしても、干し椎茸には、不足しがちな栄養素であるビタミン D が多く含まれるうえ、うまみの素となる食品なので、引き続き、毎日の食事に使っていきたいと思います。
ビタミンE、B1、B6、C、カリウム、マグネシウム、鉄
改善前後で変化はなく、通常食べている野菜、果物、豆類、穀物などから十分な量を摂取できていました。
記録をつけて感じたこと
記録をつけてみて、どんな食物からどのような栄養素が摂取できるのか少しではありますが理解が深まりました。また、よく食べる食品、料理で過不足になりやすい栄養素も大まかではありますがわかってきました。
先日、自然農の野菜作りを学ぶために視聴している YouTube チャンネル「島の自然農」で、発信者の山岡さんが菊芋の排毒効果について話されていました。その中でおっしゃっていたのは、今の世の中、化学合成物(農薬、食品添加物、空気汚染など)や身体に負担になるものを一切遮断して生きていくことは不可能に近く、それを気にしすぎていては心が落ち着かない、それよりも、多少毒素が入ってきても仕方ないと割り切って、その毒素を出していく努力をした方が精神衛生上よい、というようなことです。聞いていて、本当にその通りだなと思いました。今回の試みを通して、ホールフーズプラントベースの食事法は、何を食べて何を避ければ、身体にとって毒となる食品をなるべく避けつつ、体内に存在する毒をすみやかに排出することができるかの指標になっているように感じました。
記録をつけるのは正直なところ面倒でしたが、反面、楽しみでもありました。不足しがちな栄養素を含む食材を使っておいしい料理ができたときには、これでどのくらいの栄養が摂れたんだろう? と、早く知りたい気持ちになりました。栄養について以前よりも意識するようになったことで、毎日食べるものから自分の身体が作られていて、細胞が絶え間なく入れ替わることで生き続けていられるのだという実感がわき、食べ物への興味がさらにわいてきました。