一生健康でいるための食習慣。ホールフーズプラントベースダイエットをはじめるにあたって。

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がん、心臓病、糖尿病、認知症、その他多くの病気に生活習慣が関わっていることは、今では誰もが知るところではないでしょうか。その生活習慣の中でも、健康に最も密接にかかわっているのは食生活。ホールフーズプラントベースダイエットは、健康への長期的な効果が証明されている唯一の食事法です。この食事法について学ぶなかで知ったことや実際に経験したことなどをもとに、食生活を変えるにあたって考えておきたいことに触れてみようと思います。

目次

健康のためにできる最もシンプルで効果的なこと

がんや心臓病、糖尿病などのライフスタイルに起因するさまざまな病気を予防・改善するためには、当然ながら、その原因であるライフスタイルを改善することが最も効果的です。緊急時には、手術は命を救ってくれるかもしれませんし、短期的には、薬は有効かもしれません。しかし、それらによって一時的に症状を改善できたとしても、病気や不調の根本的な原因を取り除かなければ、結局はまた同じ問題が起きる可能性があります。また、手術にはリスクが伴い、長期的な薬の服用には、多くの場合、副作用が伴います。医療費の問題も無視できません。慢性疾患を治療するための医療費の増加は、個人の財布はもちろん、国の財政も圧迫します。

病気の発症メカニズムには、遺伝子や環境、感染などのさまざまな要因が複雑にからんではいるものの、最も大きな要因は生活習慣です。たとえ遺伝子的にリスクが高かったとしても、多くの場合、実際に病気を発症するかどうかは、その人の生活習慣に大きく依存しています。健康を維持する上で、自分の力では変えられない遺伝子などの要素よりも、自分の力で変えられる生活習慣という要素の方がはるかに重要な役割を果たすということを知ったのは、私にとってはうれしい驚きでした。生活習慣を改善することで、病気が予防できるだけでなく、すでに発症してしまった病気の進行が食い止められたり、すっかり治ることもあります。私たちが毎日習慣的におこなっていること、つまり、食事や睡眠、運動などが、健康状態に与えるインパクトは、想像以上に大きいものです。

そのように考えると、自分で自分の体のためにできる最も安全で、簡単で、しかも安価な方法は、ライフスタイルを改善すること、つまり、バランスの良い食事をし、運動をし、十分な睡眠をとり、ストレスを減らすことではないでしょうか? ライフスタイルが健康に与える影響がいかに大きいかを知り、自分の健康を自分自身でコントロールできるのだということに気付いたとき、私には、それを試してみないという選択肢はありませんでした。生活習慣を変えるだけで、ほとんどの病気を予防したり、治したりすることができるなんて、シンプルすぎるように聞こえるかもしれません。しかし実際に、アメリカなどでは、薬や手術ではなく、ライフスタイルの改善をベースに患者を治療する医師も増えてきています。

もともとは健康だった日本人ですが、欧米の食生活が入ってきて以来、生活習慣病が大きな問題となってきました。そのような食生活を日本にもたらしたのはアメリカですが、食生活による健康被害が日本よりもさらに深刻なアメリカでは、生活習慣を改善することで病気を予防・治療する「ライフスタイルメディスン」という分野がかなり進んできています。生活習慣病の先進国ともいえるアメリカだからこそ、そのようの分野の研究も一歩先を進んでいるのでしょうね。薬や手術ばかりに頼らず、ライフスタイルを改善することで病気を防ぐという方向性は、私たち日本人も是非見習いたいものです。

ホールフーズプラントベースダイエットの基本

生活習慣のなかでも、最も健康に影響を与えるのは食習慣です。身体は食べたもので作られていることを考えると、当然のことかもしれませんね。ホールフーズプラントベースダイエットは、研究により、さまざまな病気の予防や改善に対し効果があることが認められています。

ホールフーズプラントベースダイエットの基本は、動物性食品を食べないこと、全粒穀物、豆類、野菜、果物、ナッツ、シードなどをできるだけ精製、加工されていない状態で食べることです。できるだけ精製、加工されていない状態というのは、生で食べるという意味ではなく、米であれば、白米でなく玄米、果物であれば、ジュースでなく果物そのもの、小麦粉であれば、精製された白い小麦粉ではなく全粒粉というふうに、もともと含まれている食物繊維や栄養素ができるだけ取り除かれていない状態で食べるという意味です。

油については、いろいろな意見があるので一概には言えませんが、バターやラードなどの動物性の油、マーガリンやショートニングなどのトランス脂肪酸を多く含む油を避けた方がいいことだけは間違いないでしょう。オリーブオイルについては、エクストラバージンオリーブオイルは推奨される場合があります。健康・長寿で知られるブルーゾーン(詳しくはこちら)のサルディーニャ島やイカリア島の人々は、オリーブオイルをふんだんに使用します。ただし、心臓病や糖尿病などの持病があったり、そのリスクが高い場合は、オリーブオイルだけでなく、脂質を多く含む食品、例えば、ナッツ、シード、アボカドなども、なるべく避けた方がいいようです。さらに、大豆も脂質が多いことから、心臓病などの疾患がある場合は、避けた方がいいとする意見もあります。ただし、ナッツや大豆は体によい成分もたくさん含んでいるので、健康上の問題がなければ、適量を摂取することはむしろ好ましいこととされています。油の摂取については、このように意見が分かれる分野なので、自分で十分にリサーチし、自らの健康状態を考慮した上で、必要であればお医者さんとも相談して、最も納得のいく方法を採用するのがいいのではないかと思います。私自身は、健康上の問題がないので、ナッツやシードやアボカドなどは、適度に摂取した方がよいと思っています。エクストラバージンオリーブイルについては、今のところ摂取していませんが、脳の健康という観点から、今後、適度に取り入れてもいいかもしれないと考えています。

甘味料については、砂糖は避けなければなりません。白砂糖、黒砂糖、きび砂糖、てんさい糖、三温糖など、いろいろなものがありますが、どれも高カロリー低栄養の精製食品であることから、ホールフーズプラントベースでは、すべて避けるべき食品です。ほとんどの合成甘味料、はちみつ、メールプシロップ、アガベシロップなども推奨されていません。私は、甘味料としては、主にデーツを使用しています。

新しい食生活を取り入れるときに生じる問題と対処法

食生活をすっかり変えるとなると、いかに意志の強い人であっても、食事を共にする家族の理解が得られなかったり、仕事の関係で人と外食をする機会が多かったり、忙しくて料理をする時間がとりにくかったりと、さまざまな障壁にぶつかって、継続が困難になることがあるかもしれません。

一緒に生活する家族がいる場合は、他の家族も同じものを食べる必要はありません。もちろん、全員が健康な食事をするのが理想的ですが、人を説得することはきわめて困難です。家族全員の食事を無理に変えようとしても、反発されて失敗する可能性が高まるだけです。大切なのは、自分がどのような食事法を取り入れようとしているのか、何のためにそうしたいのか、その食事法でどんな効果が期待できるのかなど、家族全員にしっかりと説明して理解してもらい、できる範囲で協力してもらうことです。普段から自分が食事を作っているのであれば、むしろ自由が利きますが、パートナーに作ってもらっている場合は、可能な限り自分で料理するなど、相手に負担をかけない配慮が必要です。しばらくこの食生活を続けて、体調がよくなる、血液検査の値が改善する、体重が減るなどの目に見える効果があれば、他の家族も興味を持つかもしれません。

友人、知人、職場の人などと一緒に食事をすることもあると思いますが、その場合は、できればあらかじめ何か食べて空腹でない状態で参加する、できる限りホールフーズプラントベースに従った料理を注文するなど工夫する必要があります。周りの人には、健康上の理由でこのような食事をしていると説明すれば、そう無理強いされることもないのではないでしょうか。友人宅でのホームパーティーなどには、シェアできるおいしいホールフーズプラントベースの料理を持っていけば喜ばれるはずです。

料理をする時間が限られる忙しい人は、週末にまとめて買い物をし、下ごしらえをしておくなどの工夫をすれば、かなり時間の節約になります。特に時間がかかるのは、野菜の下ごしらえです。仕事が休みの日などに、洗って切っておく、さらには蒸したり、茹でたりしておけば、毎日の調理時間は大幅に節約できます。インスタントポット、スロークッカー、フードプロセッサーなどの便利な器具を駆使すれば、さらに簡単に料理することができます。いろいろな方法を試していくうちに、自分に合った方法が見つかるはずです。

サステイナブルにするために

習慣を変えるということは簡単なことではないと思います。特に、長年の食習慣をすっかり変えるとなると、なかなか簡単にはいかないのではないでしょうか。一度習慣にしてしまえばこっちのものですが、それまでは、大変過ぎても続きませんし、結果が見えなければ、やる気が持続しません。また、費用がかかりすぎてもサステイナブルではありません。それから、お腹がすいても長続きはしませんよね。最初の大変な時期を少しでも楽にできるよう、いくつかコツをご紹介します。

朝食のオーバーナイトオーツ

まず、毎日の料理を簡単にするためにできることは、前にも書きましたが、休みの日にまとめて買い物をして、下ごしらえをしておくことです。冷凍野菜、豆の水煮、トマトの水煮などを活用すれば、時間が短縮できます。また、休みの日にスープなどを大量に作っておけば、味を変えたり、中身を足したりしながら、数日間食べることができるので便利です。蒸し野菜とソース・ドレッシング類を作って冷蔵庫に入れておいてもいいですね。朝食は、数日分まとめてオーバーナイトオーツを作っておけば、忙しい朝の時間が節約できるので、お弁当作りに時間がまわせるかもしれません。葉物野菜を含めた緑黄色野菜は大量に摂る必要がありますが、料理しきれない場合は、スムージーにして飲むと、簡単に摂取することができます。そのまま食べるのが理想的ではありますが、ホールフーズプラントベースのお医者さんでも、必要な栄養素を十分に摂るために、スムージーを食事に取り入れている人は多いようです。

次に、モチベーションについてです。長期的な目標は、病気を治すことや病気を予防して一生健康でいることなどだと思いますが、そのようなずっと先の目標だけでは、なかなか続かないのが人間です。はじめは、一生続けよう!と意気込むより、一か月間だけのつもりで取り組んでみると効果的なようです。そして、その一か月間は、できるだけ完全にホールフーズプラントベースの食事をすることが大切です。その方が結果がはっきりと出やすいからです。血液検査を受けることができれば、食生活の改善前後で比べてみるといいかもしれませんね。数字で結果を見ると、継続する意欲もわいてくるはずです。同様に、毎日体重を計ってみても、数字に表れるので結果がわかりやすく、モチベーションにつながるのではないでしょうか。また、同じ食生活に一緒に取り組める仲間がいれば、継続することがずっと楽になるのではないかと思います。私は幸い友人と一緒に始めたので、楽しく継続することができています。家族や友人、職場の同僚など、身近に興味を持ちそうな人がいれば一番よいのですが、それが無理ならオンラインコミュニティなどでもいいと思います。とにかく、経験をシェアできる相手がいれば、続けることがずっと容易になり、楽しくもなると思います。

それから、経済的な負担がありすぎてもサステイナブルではありませんね。肉や魚を食べないので、その分食費が安くなりそうですが、野菜や果物を大量に食べるので、食費が抑えられるとも限りません。野菜が高い地域では、もしかしたら余計に高くつくかもしれません。また、ナッツやシードなどは安くありません(フラックスシード、チアシード、キヌアなどは、特に高めです)。ただし、加工食品を買わなくなり、外食も減ことを考えると、家庭によるとは思いますが、おそらくは家計への負担は減るのではないかと思います。野菜や果物は、化学肥料や農薬を使っていないものが理想的ですが、一般的に高いので、すべてそのようなものを購入するのは、家庭の財政状況によってはあまりサステイナブルではないかもしれません。幸い、たとえ化学肥料や農薬を使用した普通の野菜や果物でも、動物性食品や加工食品を摂るよりははるかに身体にいいと言われています。アメリカでは、Environmental Working Group (EWG) という非営利団体が、毎年「ダーティー・ダズン」として、残留農薬が多く検出された野菜や果物を発表しています。すべてオーガニックとはいかなくても、ここに挙げられている野菜や果物は優先的にオーガニックのものを選ぶ、という人もいます。アメリカのことなので、日本とは事情が違うかもしれませんが、参考のため、2021 年のものを以下に挙げておきます。上から順に、残留農薬が多く検出されたものです。

1. いちご
2. ほうれん草
3. ケール、コラードグリーン(アブラナ科の野菜)、カラシナ
4. ネクタリン
5. りんご
6. ブドウ
7. さくらんぼ
8. 桃
9. 梨
10. パプリカ、ホットペッパー
11. セロリ
12. トマト

日本は他国と比べて農薬の使用量が特に多いということなので、葉物野菜などは、特によく洗うように気を付けたいですね。もしも可能であれば、自分で栽培するのが一番安心ですね。

畑でとれた無農薬・無化学肥料の野菜

いつもお腹がすいているような食生活もやはり長続きしません。やせるための短期間のダイエットなら、少しくらいお腹がすいても耐えられるかもしれませんが、健康のために食生活を改善するとなれば、長く続かなければ意味がありません。植物ばかり食べていてはお腹がすくのでは? と思われるかもしれませんが、ホールフーズプラントベースダイエットのよいところは、たくさん食べられるというところです。お腹がすいたときには、果物やサツマイモやナッツ、野菜スティックとひよこ豆のペースト、オートミールなどを食べればいいので、お腹がペコペコでつらいということは全くありません。体に悪いおやつに手が出ないように、ヘルシーなおやつを常備しておくことをお勧めします。下の写真は、うちのおやつの例です。サツマイモや豆類は特に栄養豊富なので、最高のおやつです。

最後にもう一つ。おいしくなくてもやっぱり続きませんね! 実際に経験してわかったことですが、動物性食品を食べなくても、おいしいものはたくさんあります。また、このような食生活をしていると、味覚がするどくなり、素材の味がより楽しめるようにもなります。使える材料で料理を工夫したり、使ったことのない食材を試したり、料理の幅を広げるのも楽しいものです。とにかく、一か月だけと思って、はじめてみることをお勧めします!

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