「ゴミを減らしたい」と考えている人は多いのではないでしょうか? リサイクルできるものを除くと、ごみの大半は生ごみです。その生ごみの重量のほとんどは水分なので、これを焼却するのに多大なエネルギーを要することは容易に想像できます。そこで、生ごみさえ減らし、環境負荷を少しでも減らせればと生ごみ処理について真剣に考えるようになりました。私は動物性食品を食べないので、生ごみといえば野菜や果物の皮がほとんど。つまり、これさえどうにかできれば家から排出するごみの量は大幅に減らすことができます。しかし、処理に電気は使いたくないし、毎日のことなので大変な思いはしたくありません。そこで、簡単に続けられる生ごみの処理について試行錯誤し、たどり着いた方法をご紹介します。
畑での生ごみ処理を断念
以前、畑の通路で野菜くずの堆肥化を試みたことがあります。しばらくはうまくいっていて、よい方法が見つかったと喜んでいたのですが、長くは続きませんでした。というのも、そう広くはない通路の中央で緑肥を育てていたため、埋める場所が不足してきたからです。場所が少ないと必然的に穴を深く掘ることになり、だんだん大変になってきて断念してしまいました。通路がダメならと、栽培が終わった畝に野菜くずを埋めてみたこともありますが、動物に掘り返されてこちらも断念……。次の栽培時期までに畝の上で生ごみを堆肥化し、その畝で育苗したいと思っていたのですが、あとで考えてみると、寒い時期だったので、どちらにしても堆肥になるのに時間がかかり、栽培時期が来るまでに完熟堆肥にならなかったかもしれません。結局、畑で生ごみを処理するのはあきらめ、家の中でコンポストをしてみることにしました。
選んだ資材とコンポストの準備
調べてみると、コンポストには、段ボールや木箱、プラスチックの衣装ケースやバケツなど、いろいろなものが使えそうです。うちにはちょうど、グリーンカーテン用に購入した 5 個セットのポットが一つ余っていたので、これなら通気性も耐久性も兼ね備えていて最適だと思い、これを使うことにしました。ただこのポットには蓋がなく、そのままでは虫が入り放題です。そこで、虫対策として、ポットごと洗濯ネットに入れることにしました。
基材としては、腐葉土ともみ殻燻炭。腐葉土には、生ごみを分解してくれる微生物が含まれます。もみ殻燻炭は多孔質で、小さな穴が微生物の住処になります。消臭効果もあるはずです。
配合は、適当なのですが、腐葉土ともみ殻燻炭が 7:3 程度だったと思います。これを不織布ポットに入れ、少しずつ水を加えながら混ぜ合わせます。水の量は、基剤を手でギュッと握ると固まって、でも簡単に崩れる程度を目安にします。基材の量は目分量ですが、容器の半分に満たない程度にしました。生ごみを入れて混ぜるので、あまりたくさん入れると混ぜるときにこぼれてしまうからです。
毎日の作業
毎日出る生ごみは、その都度コンポストに投入しています。一日分ためて一気に投入した方が楽かもしれませんが、生ごみを置いておくとコバエが寄ってくるので、毎回処理することにしました。生ごみ(うちでは植物のみ)は、できれば細かく刻んで表面積を大きくした方が分解が早いようです。私は普段はそのまま入れてしまいますが、スイカの皮などかさばるものは細かく切るようにしています。
また、コンポストを始めたころは、微生物の数が少なく、分解力が弱いので、米ぬかを入れると分解が促進されます。最初のうちは、生ごみを入れるたびに一つかみほどの米ぬかを一緒に混ぜていました。その後は、分解力が弱まっていると思われるときのみ米ぬかの力を借りました。冬場は寒くて分解が進まないので、米ぬかがあった方がいいと思います。田舎だと、コイン精米機の横に米ぬかがたまる部屋があって、それを勝手にもらうことができます。
生ごみを(場合によっては米ぬかと一緒に)入れたら、よく混ぜてから、表面に生ごみが出ないように埋め込みます。毎回これを繰り返すだけです。
問題点と工夫
分解には水分が必要なので、生ごみは水を切らずに入れていましたが、不織布ポットは水を通すので、下に敷いていた段ボールがじっとりしてきてしまいました。そこで、園芸シート(ダイソー)を敷いた上にプラスチックのカゴ(ホームセンターの苗コーナーにおいてあるもの)を逆さにして置き、その上にコンポストを設置することにしました。これで通気性は確保しながら、床を濡らすこともありません。さらに念のために、これを薄いダンボール箱に入れ、その下にも薄いダンボール箱を置きました。下にダンボール箱を置いたのは、温度が下がりすぎないようにとの狙いもあります。冬場は気温が下がり分解がかなり遅くなるので、床との間に空気の層があれば、少しはマシなのではないかと考えてのことです。設置場所は、冷蔵庫の横ですが、これは生ごみを捨てるのに便利というだけでなく、冷蔵庫の熱気で少しは温度が上がるので一石二鳥です。見かけはすこぶる悪いのですが、機能性と作業性については、今の形でほぼ満足しています。
コンポストを続けていて気付いた別の問題点は、どうしても分解しにくいものがあると言うことです。トウモロコシの皮や芯などは、かさばる上に分解しにくいので、入れない方がいいかもしれません。また、カボチャなどの種は分解されずに残ってしまうので、あとで堆肥として使用したときに芽が出てきてしまいます。私は、できあがった堆肥を育苗培土に混ぜたりグリーンカーテン用の土に混ぜたりしましたが、カボチャやトマトがたくさん発芽してしまい、大変な目に遭いました。なかなか厄介なので、堆肥として使う予定があれば、種はなるべく入れない方が無難です。ちなみに、ピーマンなど未熟果を食べる野菜の場合は、種が未熟で発芽しないので、コンポストに入れても問題ありません。アボカドや桃など、種が大きいものは、発芽の問題ではないのですが、なかなか分解せずにそのままになってしまうので、ゴロゴロして気になるなら入れない方がいいかもしれません。また、畑で採れたもののうち、トウモロコシの皮や芯、豆の莢、落花生の殻など、分解しにくいものは畑に戻しています。埋めるのではなく、空いている場所にばらまいています。大きすぎるものは適宜切ることもありますが、基本的には、そのままばらまいてもそのうち分解するので問題ありません。
すでに触れましたが、冬場の分解が遅いことも問題です。コンポストをはじめる前は、夏の方が虫の問題などがあって大変なのかなと漠然と想像していましたが、洗濯ネットをかぶせていれば、虫は発生したことがありません。その代わり、冬場の分解の遅さは予想外の大きな問題でした。私の住む地域は気温がマイナス 10 ℃以下に下がる寒冷地で、室内が 0 ℃を下回ることもあるので、どうしても分解が間に合わない時期があります。そこまで寒くない地域では、米ぬかなどを使えばそれほど問題にならないかもしれません。うちでは、普段は生ごみ臭はしないのですが、冬に 2~3 週間留守にして帰宅したときは、うっすらと生ごみの匂いがしました。原因は、気温の低さと乾燥です。水分さえあれば、ゆっくりでも分解したのだと思いますが、留守中にすっかり乾燥してカラカラになってしまっていたので、ほとんど分解できていなかったようです。そういうわけで、極端に気温が低いときや長期留守にする前は、残念ですが、生ごみは燃えるごみとして出しています。それ以外で、乾燥が激しく分解が進まない場合には、少し水を足します。最初に基材を準備したときと同様に、手で握って軽く固まる程度の水分を加えます。またこの時に、あれば米ぬかを加えるとさらに良いと思います。
堆肥の利用
分解が順調に進んでいれば、それほど全体のかさが増えることはないのですが、せっかくなので堆肥としても利用することにしました。しばらく生ごみの投入を続けてから、堆肥にするために、コンポストの中身を一部取り出しました。この時、明らかに分解していない生ごみは取り出さないようにします。取り出した中身は、土が入っていた袋に入れて、週に一回くらい、少し水を加えながらかき混ぜました。それを一か月ほど繰り返し、そのあとは、嫌気発酵させるつもりで袋からできるだけ空気を抜いて口を閉じ、そのまま冬の間数か月おきっぱなしにしていました。
これを春になってグリーンカーテンに使いました。グリーンカーテンをはじめる一か月ほど前に、前年の残りの土に混ぜました。完熟しているという確信がないので、何も植えていないうちからたまに水をやって、さらに分解を促しました。結果的には、植物はちゃんと育ったので、十分熟していたようです。
一部を取り出して減ってしまったコンポストの中には、畑の土ともみ殻燻炭を足して、元と同じくらいの量にしました。足すのは腐葉土でもいいのですが、畑があるので畑の土を使いました。
家の中でコンポストしてみた感想
家の中でコンポストをはじめて二年ほどになりました。今では日課として、何の苦労も感じていません。むしろ、ごみが減ること、野菜や果物のクズも無駄にせず堆肥化できること、夏場でも生ごみの匂いがしないことなど、さまざまなメリットを感じながら、楽しく続けています。不織布のポットはとても丈夫で、金属製のシャベルで毎日ガシガシと混ぜても破れることもありません。混ぜるときにはどうしても土が飛んだりするので、下に園芸シートを敷いたのも正解でした。冬は寒くて分解が進まないので生ごみを燃えるごみとして排出することもありますが、無理なく気楽に続けるにはそれも仕方ないと思っています。土地の気候や生活環境によって、どのような方法が向いているかは人によって違うと思いますが、私にとっては、今のところ、この方法がベストだと感じています。