食事で糖尿病は治る? ニューヨーク次期市長候補エリック・アダムス氏

食事で糖尿病は治る? ニューヨーク次期市長候補エリック・アダムス氏

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ニューヨーク市長候補のエリック・アダムス氏は、2 型糖尿病と診断されたあと、ホールフーズプラントベースダイエット(詳しくはこちら)と出会い、食生活を劇的に変えることによって、すっかり健康を取り戻しました。そんなアダムス氏の略歴と、自力で糖尿病を治した経緯、その後の活動などについて書いてみようと思います。

目次

エリック・アダムス氏とは

2021 年 7 月、米ニューヨーク市長選の民主党予備選挙でエリック・アダムス氏が勝利しました。ニューヨーク市では長年民主党が優勢であることから、11 月の本選でも勝利が見込まれています。現在ニューヨーク市ブルックリン区長であるアダムス氏については、本選で勝利すれば、ニューヨーク市長としては史上二人目のアフリカ系アメリカ人となること、元警察官でコロナ後の治安回復を最優先事項として掲げていることなどが注目されがちですが、ホールフーズプラントベースダイエットを実践・支持していることは、日本ではあまり知られていないかもしれません。

私がアダムス氏のことを知ったのは、2020 年 1 月、その頃よく聴いていた Ian Cramer Podcast というポットキャスト(ホストのイアンは、コロナの影響でポッドキャストを休止しています)でインタビューを聞いたのが最初でした。 アダムス氏 は、食生活をホールフーズプラントベースに変えて、自力で糖尿病を治しました。それだけでもすごいことですが、さらにすごいのは、自分だけにとどまらず、糖尿病を診断され治癒するまでの過程で得た知識や経験を積極的にシェアすることによって、他の人々の健康にも大きく貢献してきたことです。それを可能にしたのは、一つには、より多くの人に影響を与えることができる、ブルックリン区長という立場でしょう。ブルックリンの人口は約 250 万人ですが、ニューヨーク市長になることができれば、アダムス氏の影響はニューヨーク市民約 800 万人に及びます。そんなことを思い、アダムス氏が予備選で勝利したというニュースを聞いたときには、とてもうれしい気持ちになりました。この人のリーダーシップで、より多くの人々が健康を改善し、人生を変えることができたら、本当に素晴らしいことですね。

2021年11月4日追記
エリック・アダムス氏が当選しました! 任期は来年 1 月からということです。ニューヨークがどう変わるか楽しみですね。

糖尿病の診断、ホールフーズプラントベースダイエットとの出会い

若干体重オーバーであること以外は特に健康上の問題はなく、定期的に運動もし、普段からよく歩き、たまにバスケットボールも楽しむ。そんなアダムス氏が糖尿病の診断を受けたのは 2016 年 3 月、ブルックリン区長として忙しく働いていた 56 歳のときのことでした。ある朝目を覚ますと、突然目が見えなくなっていたのです。その後やや視力は回復したものの、激しい腹痛もあり、医者にかけこみました。そこで分かったことは、腹痛の原因は潰瘍で、これについてはそれほど重大なことではないものの、問題は糖尿病。病状はかなり進んでおり、A1c 値は 17 %と、正常とされる 4~5.6 %を大きく上回っていました。視力を失った原因は高血糖によるものでした。医師からは、糖尿病はアフリカ系アメリカ人にはよく見られる病気で、一生治ることはないと言い渡されました。

アダムス氏は、医師の言うことに納得できず、自分でリサーチをはじめました。そして、クリーブランドクリニックのコールドウェル・エセルスティン・ジュニア博士が 30 年前に実施した研究のことを知ります。その研究では、重症の心臓病患者 21 名がホールフーズプラントべ―スダイエットに従った食事を続け、ほぼ全員の心臓病が回復したというものです。食べるものを変えるだけで重い心臓病が治るなど、にわかには信じられないアダムス氏は、さらにリサーチを続けます。そして、行き当たったのがニール・バーナード医師らの研究。この研究は、2 型糖尿病患者のグループにホールフーズプラントべ―スの食事のみを摂らせるというものです。数週間のうちに、患者の体重は減少し、インスリン感受性は向上し、HbA1c 値は低下しています。なかにはすっかり回復した患者もいたという研究結果に、アダムス氏は希望の光を見いだしました。

このダイエットを試すことに決めたアダムス氏は、 早速エセルスティン博士に電話をかけました。博士は、今まで食べてきた食品がなぜアダムス氏の体を徐々にむしばんできたのか、ホールフーズプラントベースダイエットでどうやって健康を取り戻すことができるのか、科学的に説明してくれました。アダムス氏は博士に向かって言います。もしもこれが上手くいったら、区民を私と同じように健康にするために人生を捧げます。この言葉は、すぐに現実になります。

糖尿病からの回復

アダムス氏は、エセルスティン博士から、2 型糖尿病は生活習慣病であるという説明を受けます。不健康な食生活で筋細胞に脂肪が蓄積すると、蓄積した脂肪は、インスリンが糖を細胞に運ぶのを妨げます。この状態で、高脂肪の食事をすると、食べたものの脂肪が血液中にあふれ出し、筋細胞の詰まりを悪化させ、インスリンは細胞に糖を運ぶというその役割を果たせなくなります。逆に、動物性の脂肪を摂るのをやめて、体内の脂肪を減らすことができれば、糖尿病を完全に治すことができるというのです。

アダムス氏の決意は固く、動物性食品や加工食品を含め、家中の不健康な食品をすべてゴミ箱に捨ててしまいます。なじみのファーストフードやフードトラックともお別れです。食生活をがらりと変えるのは最初は大変でしたが、お腹がすかないというのは救いでした。ホールフーズプラントベースの食品であれば、お腹いっぱい食べてもいいからです。お腹がすけば、野菜や果物、ナッツなどの植物を食べればいいのです。結果はあっという間に現れ、やせていくアダムス氏を周りの人たちが心配するほどでした。疲れにくくなり、視力も完全に戻りました。2 か月後には、体重が約 16 キロも減っていました。17 %だった A1c 値は、正常値である 6 未満まで下がりました。短期間で、すっかり健康を取り戻したのです。

ニューヨーク市民の健康を取り戻すために

健康になったアダムス氏は、あることに違和感を感じました。こんなに簡単に病気を治す方法があるのに、なぜ誰もそのことを知らないのだろう? ブルックリン区長という立場で、アダムス氏は、ニューヨーク市民の健康を取り戻すための活動をはじめました。2019 年には、NYCヘルス+ホスピタルズ/ベルビューと協力して、プラントベース・ライフスタイルメディスン・プログラムを立ち上げます。このプログラムは、心臓病や糖尿病、肥満、高コレステロール、高血圧などの持病に苦しむ ニューヨーク市民を募り、ライフスタイルを変えること、特に、果物、野菜、豆類、未精製の穀類を多く含み、動物性食品と砂糖を含まない食事をすることで健康を取り戻させようというものです。200 人からはじめ、すぐにウェイティングリストは 650 人以上にふくれ上がりました。

病気の人々の健康を回復させることに加え、アダムス氏は、子供たちの健康に特にフォーカスしました。多くの慢性疾患は、症状が出る何年も前の子供の頃にはじまることを考えると、子供たちに健康な食習慣を身につけさせることは不可欠です。2017 年、ブルックリンの 15 の学校でミートレスマンデー(肉を食べない月曜日)を実施することが決まりました。その後、この活動は、ニューヨーク市全体に広がり、100 万人以上の子供たちに影響を与えています。

自転車のかごに野菜

エリック・アダムス氏の 著書 “Healthy at Last”

アダムス氏が、自身の経験から、食生活の改善によって糖尿病とその他の慢性疾患を予防・治癒する方法を記した著書 Healthy at Last を先日 Audible のオーディオブックで聴きました。ホールフーズプラントベースに関する本はたくさんありますが、医師や研究者が書いた難しい内容ではないこともあり、この本は特にわかりやすいと感じました。 ホールフーズプラントベース ダイエットのことを全く知らない人でも、この本を一冊読めば、このダイエットをはじめるのに必要な情報は得られるのではないかと思います。 英語しかないのが残念ですが、もし興味があれば一度読んで(聴いて)みてください!

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