クリントン元米大統領を心臓病から復活させた食生活

手術シーン

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最近、クリントン元大統領が尿路感染症から入院というニュースを耳にされた方も多いかと思います。そのクリントン氏に重度の心臓病の既往歴があることはご存じでしょうか? この記事では、深刻な健康問題を抱えていたクリントン氏が、どのようにして健康を取り戻したかについてお伝えしようと思います。

目次

クリントン元大統領の過去の健康状態と食生活

米国のクリントン元大統領は、10 月 12 日、尿路感染症に起因する敗血症で入院しましたが、17 日に無事退院したというニュースがありました。敗血症は、感染症が重症化して全身に炎症が広がった状態で、治療が遅れると命にかかわるということなので、深刻な事態にならずよかったですね。

1993 年から 2001 年までアメリカ大統領を務めたクリントン氏は現在 75 歳ですが、最近の様子を見ると、とてもお元気そうに見えます。今回も大事に至らなかったのは、普段から健康だったからかもしれません。そんなクリントン氏ですが、重大な心臓病の病歴があります。2 期 8 年間の大統領職を終えてしばらくたった 2004 年(当時 58 歳)、ブックツアーの最中に胸に不快感をおぼたクリントン氏 は、病院で検査を受けます。そのとき深刻な問題が見つかり、4 か所のバイパス手術を受けることになります。その後、2010 年(当時 63 歳)には、震災で被害を受けたハイチを支援活動ために訪問中、疲労感をおぼえ、帰国後に検査を受けます。その結果、前のバイパス手術の 4 か所のうちの 1 か所が塞がっていることがわかり、その血管を広げるためにステントを 2 つ挿入することになります。そのような深刻な事態に陥った原因はなんだったのでしょうか? 心臓病の家族歴や仕事のストレスなどもその一因と考えられますが、主な原因は、当時のクリントン氏の食生活のようです。

その頃のクリントン氏は、かなりの大食漢で、ファーストフードなどのジャンクフードが大好きでした。ハラペーニョ・チーズバーガー、チキンエンチラーダ、シナモンロール、パイなどが特にお気に入りだったとか。とはいえ、これは特に珍しいことではもなく、標準的なアメリカ人の食生活だというだけのことです。私も学生の頃、実際にその食生活を経験しました。アメリカ人家庭に 1 か月ホームステイしたのですが、夕食は、冷凍のフライドチキンやフライドポテトをオーブンに入れて温めただけ。野菜は見当たりません。買ってきたファーストフードや宅配のピザが夕食ということもありました。バタークリームたっぷりのケーキも驚くほどの甘さ。朝食は砂糖たっぷりのシリアル、冷蔵庫には4リットル入りの牛乳、ワインも見たこともない巨大な瓶でした。外食をしてもとにかく大量で、太らない方が不思議なくらい。私も帰国後 3 キロも太っていました。その後カナダでも半年間ホームステイをしましたが、そのときも同じような食事で、最初の 3 か月で5 キロも太りました。周りの同じようにホームステイをしている人たちも多くが体重を増やしていました。私の場合は、限られた期間のことだったので、しばらくして体重は元に戻りましたが、そのような食生活を一生続けていたらと考えると恐ろしいです。太るだけでなく、健康を害するのは目に見えています。脂質異常や高血圧、高血糖は心疾患の危険因子ですが、動物性食品と砂糖や小麦粉などの精製された炭水化物を含む加工食品が摂取カロリーの大きな部分を占める標準的なアメリカ人の食生活を考えると、アメリカ人の死因第 1 位が心臓病であることもうなずけます(2019 年の アメリカにおける心臓病を原因とする死亡は 659,041 件)。

以前と比べると、北米でも特に都市部では、健康志向の人も増えてきたように感じます。とはいえ、全体を見ると、まだまだ不健康な食生活が主流のようです。北米のスーパーで地元の人のカートの中をのぞくと、加工食品と動物性食品の山でびっくりすることがよくあります。しかし、共働きの家庭が多く、忙しくい毎日を過ごしていると、便利なファーストフードや加工食品についつい手が出てしまうのも仕方のないことなのかもしれません。また、そのような加工食品には、精製された油や砂糖などの中毒性のある原材料がふんだんに使われているため、ドラッグと同じように依存症や中毒になってしまい、簡単にはやめられなくなるという事情もあるようです。クリントン元大統領もまさにそんな状況だったのかもしれません。

厚生労働省が発表している 2020 年人口動態統計月報年計概況によると、日本の心疾患(高血圧性をのぞく)による死亡者数は、205,518 人となっており、がんに次いで 2 番目に多い死亡原因となっています。

ハンバーガー

クリントン元大統領の新しい食生活と、それを支えた人々

2010 年にステント留置術を受けたクリントン氏は、健康を取り戻すために食生活を変えることを決意します。油たっぷりの肉料理が大好きだったクリントン氏が、肉もチーズも牛乳も魚もやめ、低脂肪の完全な菜食に転向したのです。この食生活の劇的な改善の裏には三人のドクターの存在がありました。

一人目は、生活習慣の改善により病気を予防・治療するライフスタイルメディスンの草分け的存在、ディーン・オーニッシュ博士です。クリントン氏 とオーニッシュ博士は、1993 年、クリントン氏が大統領に就任して以来の付き合いです。夫の健康を気遣った夫人のヒラリー・クリントンさんが、ホワイトハウスの料理人の指導をオーニッシュ博士に依頼したのがきっかけです。 オーニッシュ博士は、油脂を多く使用するフランス料理のシェフたちに、ヘルシーな料理を紹介します。大豆で作ったバーガー、豆腐と野菜の炒め物、サーモンと野菜の料理など、おいしくて栄養バランスを考えた料理です。クリントン氏の健康に影響を与えた二人目の人物は、T. コリン・キャンベル博士です。中国での大規模な栄養学研究を通して、これまでの栄養の常識をくつがえし、動物性食品の危険性を世に知らせた人物です。そして、三人目は、 食生活の改善による心臓病治療で大きな成果を上げていたコールドウェル・エセルスティン・ジュニア博士です(この三人については、また改めて詳しく書く予定です)。

病気と食べ物との関連性をそれぞれの視点から研究し、動物性食品を避け、未加工・未精製の植物性食品を食べることが、多くの病気を予防、さらには治療するために最も有効な手段であるとの結論に達したこれら三人の本を読んだクリントン氏は(これらの本については下記参照)、食生活を大きく変える必要性を痛感します。 2004 年のバイパス手術後には、摂取カロリーを減らしたり、コレステロールを摂らないように気を付けたりと、自分なりに食べ物には注意するようになっていたクリントン氏ですが、それでもなお食品から摂取したコレステロールが血管内に蓄積されていたという事実から、少し気を付ける程度では血管の閉塞を防ぐには不十分だということに気付きます。そして、オーニッシュ博士やエセルスティン博士からアドバイスを受けながら、本気で食生活の改善に取り組みます。生きて娘の結婚式に出たい、孫の誕生と成長を見届けたい、というのがモチベーションとなったようです。

このときクリントン氏が読んだオーニッシュ博士の本は、 “Dr. Dean Ornish’s Program for Reversing Heart Disease” (1990 年)という本ですが、残念ながら日本語訳は出ていません。他の二冊については日本語版が出ています。キャンベル博士の “The China Study” (2005 年)は、チャイナ・スタディーとして、エセルスティン博士の “Prevent and Reverse Heart Disease” (2007 年)は、血管をよみがえらせる食事として出版されています。どちらも原書が出版されてから 15 年前後たっていますが、翻訳されたのは比較的最近なので、日本でも食事法の重要性が認められだしたということかもしれません。両書の翻訳者である松田麻美子さんは、ご自身でも健康関連の本を何冊か出版されており、この分野にはとても詳しい方です。

野菜サラダ

食生活を変えた結果

コレステロールたっぷりの動物性食品や加工食品をすっかりやめて、野菜中心の食事をするようになったクリントン氏は、体調が良くなり、血液などの検査値も良好で、体重も 14 キロほど減り、元気になったと話しています。味覚も変わったようで、野菜や果物や豆類などを中心とする、新しい食生活を楽しんでいるとのこと。大統領時代とダイエットを変えたあとのクリントン氏を見比べると、明らかに体形が違います。やせるために食生活を変えたわけではありませんが、高校時代の体重に戻ったということなのですごいですね。

念願かなって、一人娘のチェルシーさんの結婚式に出席し、二人の孫に恵まれたクリントン氏、今も完全な菜食を続けているのかは不明ですが、さらにほっそりした姿を見ると、少なくとも以前のような食生活ではないことは間違いないでしょう。下の動画では庭で育てた野菜を披露されているくらいなので、野菜中心の健康な食生活であることが想像されます。きっとお孫さんたちの成長を長く見守ることができるでしょうね。

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