自然農やパーマカルチャーの考え方を参考にした素人菜園。安心して野菜が食べられるように、土を守り、虫や草を友達にするという方針のもと、化学肥料や農薬を使わずに、野菜作りにチャレンジします。
安心して食べられる安全な野菜
安全な食べ物を本当に安心して食べたい、というのが畑をはじめた第一の理由であり、自給自足を目指す理由の一つでもあります。
では、安心して食べられる食べ物とはいったい何でしょうか? 人それぞれ考え方は違うと思いますが、私にとっては、化学肥料や農薬に頼らず、草や虫と共存しながら、微生物をたっぷり含んだ豊かな土壌で育った栄養豊富な野菜や果物です。さらには、その栽培方法が、人にとっても環境にとってもサステイナブルであること、つまり、環境に悪影響を与えないこと、そして無理なく続けられる方法であることもとても重要だと感じています。もちろん、口で言うほど簡単ではないことは容易に想像がつきます。ましてや、農業の知識も経験もない素人です。だけど、どんなことでも同じですが、とにかくやってみないことには何もはじまりません。とにかく実行あるのみ!
「自然農」や「パーマカルチャー」については前から興味があったので、これまでも本やインターネットでよく情報収集していました。今回畑をはじめることになってからは、より具体的なことを知りたくなり、栽培方法などを紹介している自然農関係の YouTube チャンネルを毎日のように見ています。図書館では、その関係の本を片っ端から借りて読んでいます。その結果、ずいぶん賢くなって、もう何でもわかるようになりました、と言いたいところですが、実際のところ、頭の中でいろいろな情報がごっちゃになって、なにがなんだかわからなくなってきてしまいました。というわけで、細かいことはおいておいて、なるべく基本を守りつつ、思うがままにやってます。とにかく目標は、化学肥料や農薬を使わず、安全な野菜作りをすることです。そのためのおおまかな畑の方針について書いてみたいと思います。
土と微生物
化学肥料と農薬は使わず、土は耕しません。
たった 1 グラムの土には何億もの微生物が生息しているそうです。これらの微生物は、土中の虫の死骸や植物の残骸などの有機物を分解し、植物に栄養を供給します。植物はその栄養ですくすくと育ち、人間はそれを食べるわけです。微生物が豊富で栄養豊かな土壌で育った野菜は、当然ながらそれ自体が栄養たっぷり。ところが、土を耕し、化学肥料や農薬を使う農法では、土壌の微生物が減り、野菜の味はもちろん、栄養も少なくなってしまうと聞きました。だけど、虫食いがあったり、形が悪かったりする野菜や果物は売れにくいでしょうし、作業の効率化やコストという観点からも、実際に営農している方々からすれば、化学肥料や農薬の使用は仕方のないことなのかもしれません。無農薬の野菜もお金を払えば買えるので、要は消費者が何を重視して何を選ぶか、ということなのかもしれません。もちろん安く安全な野菜が手に入るのが理想ではありますが。
話を戻しますが、自分で安全な野菜を作るには、土の中の微生物を守ることが大切だということを学び、農薬と化学肥料を使わず、土は耕さない方針でいくことにしました。とはいえ、貸農園なので、きれいに草を刈って耕した状態で引き渡していただきました。そんなわけで、本格的な自然農のスタートとはいきませんが、何事も完璧を目指すと挫折しやすいもの、適当にできる範囲でやっていきたいと思います。畝立ては最初のみ、その後は同じ畝を耕さずにそのまま使っていくつもりです。
草と虫
草の整理は最低限に。
畑で野菜を育てようと思うと、ビニールマルチや防草シートを使ったり、除草剤をまいたりと、なんとか草が生えないように努力するのが普通だと思います。そして、害虫がついたら農薬で退治するのが当たり前だと思います。でも、自然農やパーマカルチャーでは、草や虫をすっかり取り除くということはしません。草は、作物の成長の妨げにならない程度に刈ってコントロールはするものの、すべて刈ることはしません。適度に残した草は、作物を乾燥や暑さ・寒さから守ってくれます。刈った草は、マルチとして使います。株を守り、土に栄養も与えてくれます。同様に、作物に被害を及ぼす害虫も徹底的に排除するようなことはしません。害虫がいれば、その害虫を餌にする天敵もやってくるので、その天敵の住処となるように、雑草を刈らずに残したり、敷草をしたりして、天敵が住みやすい環境を作ります。逆に、害虫をすっかり取り除こうとしても、実際には、数は減ってもすべて排除することはできず、そうなると天敵も来なくなってしまいます。結果的に、少ない害虫が好き放題作物を食べ、繁殖するというわけです。また、コンパニオンプランツも活用します。コンパニオンプランツは、作物の成長を助けたり、害虫を防いでくれたりと、作物に利益をもたらしてくれます。
要するに、自然農もパーマカルチャーも、作物、草、虫などをそれぞれ別個に考えるのではなく、畑全体の環境を一つのものとして考え、全体のバランスが取れるように人間が少し手助けをする、という考え方だと理解しています。畑自体が人工的なものではありますが、その畑の環境をできるだけ自然の形に近づけて、本来あるべき自然のハーモニーを取り戻すことが大事なのだと思います。
というのが理想ですが、実際には、何の草もない状態からはじめたので、マルチに使う草もなく、裸の土に苗を植え、種をまきました。丸出しの苗は一気に虫の餌食になりました。逆に、草が生え出してからは、まいた種が草に負けて芽を出さないこともありました。梅雨のころからは、草が驚くほどに伸びてきて、きれいに整備された周りの畑と比べて見苦しいのもあって、ついつい刈りすぎてしまいました。そのせいか、害虫も増えました。覚悟していたことですが、なかなか教科書通りにはいきません。それでも、刈った草を重ねていくことで、畝の上の草マルチも少し厚みを増してきて、見かけだけは、ほんの少し、自然農の畑らしくなってきました。敷いた草の下では、いろいろな虫が活動しているようすです。そのなかには、いわゆる害虫もいるのでしょうけど、人間が介入しすぎないことで、害虫と天敵とのバランスがいい状態になれば、少しは被害が減るのでは、とひそかに夢見ています。簡単なことではありませんが、草と虫を敵ではなく、友達にするのが目標です。
サステイナブルということ
環境にとっても人にとってもサステイナブルな栽培方法。
「サステイナブル(sustainable)」という言葉は、よく「持続可能な」と訳されています。ここでは、環境の観点からは、土壌や周囲の生態系に悪影響を与えずに栽培を持続できること、また、人間の立場からは、無理せずに栽培を続けられること、という意味でこの言葉を使っています。環境という意味では、上に書いたような方針を立てました。では、人間にとってサステイナブルであるためには、つまり、無理なく楽しく続けられるようにするためには、一体どうしたらいいのでしょうか?
これも実は環境に関する方針と密接に関連しています。草を刈りすぎずに残し、株元には草を敷くことで、土の乾燥が防がれ、水やりの必要性が減ります。実際に畑に水をやったのは、真夏を含めてほんの数回。それも、種をまいたときや買ってきた苗を植え付けたときだけ。それでも野菜は元気です。また、毎回耕さないことで、作業はずいぶん楽になります。夏の草刈りはそれなりに大変でしたが、それ以外は楽だったので、今のところ十分サステイナブルだと感じています。いろいろなやり方を試しながら、年をとっても続けられるような方法を探っていきたいと思います。
最後に
ホールフーズプラントベース(詳しくはこちら)という動物性食品や加工食品を極力排除した食生活をしているため、野菜はまさに食卓のスターです。果物も栄養源として同様に大切ですが、自分の土地がなければ果樹を持つことはむずかしいので、今はとにかく野菜作りを学ぶことに集中したいと思っています。ひと夏超えようとしている畑は、私たちと一緒に、少しずつ成長していってくれるはずです。