元気に長生き! 世界のブルーゾーンに学ぶ (後編)

イタリアの田舎の景色

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世界に点在するブルーゾーンと呼ばれる 5 つの地域には、元気に年をとり、幸せな生活を送っている人たちがたくさんいます。そんなブルーゾーンから、健康と長寿の秘訣を学びます(後編)。 前編はこちら↓

目次

沖縄(日本)

日本からは沖縄がブルーゾーンとして認定されています。ブルーゾーンの調査が最初におこなわれた 2004 年の時点では、沖縄女性の平均寿命は世界一で、沖縄は健康長寿県として名を馳せていました。しかし、日本の平均寿命は現在も世界一をキープするなか、2015 年の都道府県別の統計では、沖縄は女性 7 位、男性 36 位とかなり順位を下げました。食生活の欧米化や車中心の生活へのシフトがその一因と考えられています。しかし、現在も元気に長生きしている人たちはいます。子供の頃から続けてきた、伝統的なライフスタイルを維持している人々です。

今では人口に対するファーストフード店の数が日本一と言われる沖縄ですが、以前は、野菜中心の質素な食生活を送っていました。主食のさつまいもの割合は、食事全体のなんと 67 %を占めていました。肉や魚はわずか 2 %です。沖縄の野菜と言えばゴーヤですが、これは血糖値を下げる効果があると言われています。ヨモギやショウガやウコンも健康に一役買っています。また、豆腐や味噌として食べられる大豆は、心臓病や乳がんを予防すると考えられています。野菜は畑で自分で育てます。それにより、新鮮な野菜がいつでも食べられるだけでなく、畑仕事がちょうどよい運動にもなります。日に当たることで健康には欠かせないビタミン D も生成されます。また、椅子やベッドのない生活は、一日に何度も床に座ったり、立ち上がったりしなければならないので、それ自体が運動になります。

特筆すべき沖縄の文化として、「模合(もあい)」という会合の習慣があります。もともとは労働力や金銭を互いに都合しあうという相互扶助の意味合いではじまったもののようですが、ビュートナー氏らが注目しているのは、信頼できる仲間を持つことの大切さです。数人のグループで定期的に集まって、世間話や悩み相談など、なんでも自由に話し合うことでストレスや心配事を解消し、また、みんなで集まってウォーキングなどをすることで、一人の場合よりも運動を継続しやすくなります。

最後になりましたが、沖縄の人々の長生きの一番の秘訣は、「生きがい」を持つことのようです。毎朝起き上がる理由があることは、何よりも生きる力につながるということなのでしょうね。この生きがいという概念は、海外でも非常に注目されており、ぴったり当てはまる英語がなかったことから、今ではそのまま ”ikigai” として通じる言葉になってきているほどです。

ロマリンダ(アメリカ)

肥満や生活習慣病が大きな問題となっていることから、健康や長寿とは結び付きにくいアメリカですが、そんなアメリカにもブルーゾーンがあります。ロサンゼルスから 100 キロほど西に位置するカリフォルニア州ロマリンダです。この地がブルーゾーンに認定されたのは、人口の約三分の一を占めるキリスト教の一派、セブンスデー・アドベンティストのおかげです。アドベンティストは、 菜食、禁酒、禁煙、それに適度な運動を取り入れた、その健康的なライフスタイルで知られていますが、 平均的なアメリカ人よりもなんと 10 年も長生きします。ロマリンダは、アメリカの中にあって、そのような人々の人口が集中する特殊な地域なのです。 地理的に孤立した地域で独自の文化を守ってきたことが結果的に長寿につながった他の 4 つのブルーゾーンとは違い、自らの意思で健康的な生活を実践するアドベンティストが暮らすロマリンダは、私にとっては、ブルーゾーンの中でも特に興味深い地域です。

多くのアドベンティストは、ベジタリアンです。野菜、果物、豆類、ナッツ、未精製の穀物を含むバランスの良い食事を摂り、砂糖、塩、精製された穀物は控えるよう推奨されています。食事に占める野菜と果物の割合はそれぞれ約 30 %、豆類 12 %、乳製品 10 %、穀類 7 %と続きます。肉類を食べるアドベンティストもいますが、その量は少なく、4%にすぎません。また、水を十分に飲むようにも勧められており、これは心臓病の予防に役立っているようです。アドベンティストは日常的にナッツを摂取しますが、ナッツの健康や長寿に対する効果もいくつかの研究で認められています。また、早い時間に軽い夕食を摂ることも、肥満の防止や質の良い睡眠につながっているようです。

アドベンティスト の安息日は土曜日です。その日は、仕事のことなどは忘れ、家族や友人と過ごします。教会に行き、自然の中でウォーキングを楽しみます。そのような日があることで、ストレスを解消し、人とのつながりを深め、適度な運動をすることが、自然と習慣化されます。また、セブンスデー・アドベンティスト教会は、ボランティア活動を奨励しています。人のためになる活動に従事することで、目的意識が芽生え、年をとってもアクティブでいられます。これは、精神的にも肉体的にも大きなプラスになり、長生きにつながります。

自分のブルーゾーンを作り出す

実際私たちも、ブルーゾーンの一つに住み、長生きしている人たちと同じ伝統的な生活をすれば、おそらく同じように健康に長生きすることができるでしょう。とはいえ、仕事の問題、お金の問題、言葉の問題、永住権の問題などから、そんなことはなかなか難しいのが現状です。そこで、ブルーゾーンに引っ越すのではなく、日常生活にブルーゾーンの習慣を取り入れて、自分の周りにブルーゾーンを作り出してみてはいかがでしょうか?

ビュートナー氏は、医学研究者、人類学者、人口統計学者、疫学者などの専門家とチームを組み、5 つのブルーゾーンに共通する次の 9 つの特徴を探り出しました。

  1. 日常の中での運動
    ブルーゾーンでは、わざわざ運動はしません。日常生活で自然に体を動かします。畑仕事や台所仕事には、便利な機械は使わないので、それだけで適度な運動になります。
  2. 目的意識
    沖縄では「生きがい」、ニコヤ半島では “plan de vida” と言われる生きる理由や目的を持つことは、長生きの一番の原動力です。
  3. ストレスを減らす
    ストレスと病気は密接な関係にあります。ブルーゾーンの人々にもストレスはありますが、それを解消するような習慣もあります。神に祈ったり、先祖を拝んだり、昼寝をしたり、家族や親しい友人とワインや食事を楽しむなどです。
  4. 腹八分
    食べすぎは健康によくないというのは、誰もが知るところです。満腹まで食べないことで、肥満が抑えられます。また、ブルーゾーンの人々は、軽い夕食を摂ったあと、次の日まで何も食べません。
  5. 菜食に近い食事
    ブルーソーンの食事は動物性の食品を避けるものではありませんが、肉類(特に豚肉)を食べる回数は平均月 5 回、その量も 100 グラム程度です。また、豆をたくさん食べるのもこれらの地域の特徴です。
  6. 適度な飲酒
    ブルーゾーンのどの地域でも定期的にグラス 1 ~ 2 杯の適度な飲酒を楽しんでいます。親しい友人や家族、それにおいしい料理と一緒にワインを飲めば、ストレスも軽減されます。
  7. 宗教グループに所属
    ブルーゾーンの 100 歳を超える人々の多くは、宗教的なコミュニティーに属しています。
  8. 家族優先
    ブルーゾーンでは、高齢の両親や祖父母は、同じ家や近所で暮らしています。配偶者や子供も大切にします。
  9. 適切な社会的つながり
    どんな人たちと一緒にいるかは、自分の行動に多大な影響を与えるので、健康にも大きくかかわります。不健康な食事を好む人と一緒にいれば自分もそのようなものを食べ、愚痴ばかり言っている人と一緒にいれば、自分も不満ばかり口にするようになるということです。

環境や文化が異なる 5 つの地域に共通するこれら 9 つの特徴こそが、健康に長生きする秘訣です。意外にそれほど特殊なことではない、と思われたのではないでしょうか? そうは言っても、これらすべてを実践するのは、簡単なことではないと思います。もちろん、健康のためと思って、普段お酒を飲まない人が無理に飲む必要は全くありませんし、宗教活動が身近ではない日本で、わざわざ宗教に入る必要もありません。例えば、車に乗らずに歩いて買い物に行く、庭やベランダで野菜を育てる、ボランティアをはじめる、動物性の食品を減らす、休みの日は家族と一緒に過ごす、悪影響を与える友人を避け、よい影響を与えてくれる友人と過ごすなど、できることはたくさんあると思います。完ぺきでである必要はありません。できそうなことをできる範囲で実践することによって、または少しでもこのような生き方を意識することによって、少しずつでも健康で幸せな生活に近付けるのではないでしょうか。

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