元気に長生き! 世界のブルーゾーンに学ぶ(前編)

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世界に点在するブルーゾーンと呼ばれる 5 つの地域には、元気に年をとり、幸せな生活を送っている人たちがたくさんいます。そんなブルーゾーンから、健康と長寿の秘訣を学びます(前編)。

目次

ブルーゾーンとは

「ブルーゾーン」をご存じでしょうか? 健康で長寿の人々が多く暮らしている、世界の 5 つの地域を指す言葉で、2005 年に 『ナショナルジオグラフィック』誌から世に知られるようになりました。 最初にブルーゾーンと名付けられたのは、イタリア、サルディーニャ島の村々です。その後、作家であり探検家でもあるダン・ビュートナー氏とそのチームは、世界に点在する同様の健康・長寿エリアを見つけ出しました。その中には日本の沖縄をはじめ、コスタリカのニコヤ半島、アメリカのロマリンダ、ギリシャのイカリア島が含まれます。 ビュートナー氏らは、それらの地域に足を運び、人々がどんな暮らしをしているのかを実際に観察し、地域の人々の話を聞き、健康で長寿の人々がこれらのエリアに集中している理由を探り出します。

ここで大事なのは、ブルーゾーンの人々が、単に長生きというだけではなく、元気に幸せな日々を送っているということです。日本をはじめとする先進国では、20 世紀に入るころから、医療の発達により、人々の寿命が飛躍的に向上しています。それはもちろん素晴らしいことなのですが、残念なことに、健康上の理由などで「生活の質」が低下し、長生きを心から楽しめない人が多いのも事実ではないでしょうか? 年をとれば体が不自由になるから長生きはしたくない、ボケるのが怖いから早く死にたい、などと思っている人も少なくないと思います。私自身、以前はそう思っていました(今は 150 歳まで元気に生きるつもりです)。ブルーゾーンの人々は、そんな私たちに、環境やライフスタイルが変われば、年をとっても元気に楽しく生きることが可能だということを教えてくれます。

この記事では、まず、ブルーゾーンと呼ばれるそれぞれの地域について概説します。そのあと、ビュートナー氏らが、これらの地域に共通するライフスタイルを研究・分析することで導き出した、楽しく健康に長生きする秘訣をご紹介したいと思います。

ニコヤ半島(コスタリカ)

コスタリカは、軍隊を持たず、福祉や教育、環境保護に力を入れる、中米の小さな国。この自然に囲まれた美しい国は、幸福度が高い国としても知られています。人の幸せを数値化して比較することは難しいですが、国連が毎年発表している世界幸福度ランキングによると、今年 2021 年、コスタリカは、発展途上国でありながら、欧米の先進国にまじって 16 位にランクインしています(ちなみに、幸福度が低いといわれる日本は 56 位です)。そんなコスタリカのブルーゾーン、ニコヤ半島は、ニカラグアとの国境の南に位置します。

ニコヤ半島の人々は、人生において、“plan de vida”(生きる目的)を大事にしています。日本語でいう「生きがい」です。これが長寿に深くかかわっていると考えられています。家族を大切にするこの地域の人々は、100 歳を超えても老人ホームではなく、自宅で家族に囲まれて生活しています。ですから、助けが必要なときは、子や孫がいつでも近くにいます。逆に、孫の世話をしたり、できる範囲で家事をしたりすることによって、年をとっても家族の役に立ち、それが生きる目的につながっています。

この地域のライフスタイルの特徴のひとつは、早めの時間に軽い夕食をとることです。伝統的な食事は、トウモロコシ、豆、カボチャを中心とした質素なものです。食事に占める乳製品の割合は 24 % と高いものの、肉や魚は 5 %、卵は 2 %と低い割合になっています。人々は、年をとっても、孫の世話や家の用事などを通して、よく体を動かします。外で適度に日に当たることも健康に寄与しているようです。紫外線に当たることにより、食事からは摂りにくいビタミン D が十分に生成されるからです。ビタミン D 不足は、骨粗しょう症やうつをはじめとするさまざまな症状を引き起こすと考えられているので、適度な日光浴はとても大切です。また、家族だけではなく、近所の人などとの付き合いを大切にし、よく話し、よく笑うこともこの地域の人々の特徴となっています。

サルディーニャ島(イタリア)

地中海に浮かぶ島、サルディーニャには、世界で最初にブルーゾーンとして特定された村々が含まれます。この地域は、100 歳以上の男性人口が世界一多いことで知られています。その長生きの理由の一つは、長寿と関連付けられる遺伝子マーカー M26 です。地理的に孤立していることが幸いして、この長寿遺伝子が途切れることなく受け継がれてきたのです。ところが、この遺伝子によって説明されるのは、長寿の 25 %だけだということが近年の研究により判明しました。残りの 75 %はというと、この地域の伝統的な生活習慣です。周りの影響を受けず、文化的に孤立することで、伝統的なライフスタイルを守り続けてきたことが、長寿の一番の要因ということです。

この地域の人々は、狩りをし、魚を釣り、畑で作物を育てます。食事に占める穀物の割合はほぼ半分、乳製品は 4 分の 1、野菜は 12 %、肉や魚は 5 %です。全粒粉のパン、豆、庭で作った野菜や果物を食べます。赤ワインは毎日飲みます。羊を放牧してそのミルクからチーズを作り、肉を食べるのは日曜日や特別な日だけです。男性の寿命が特に長いことは、毎日放牧で 8 キロもの距離を歩くからだとも考えられています。また、友人と集まって冗談を言い合い、よく笑うこともストレス解消につながり、心臓病のリスクを減らしていると考えられます。

家族の絆がとても強いのもこの地域の特徴です。家族に経済的支援を与え、子育てを手伝い、なによりも長年の経験で培った人生の知恵を伝えてくれる高齢者は、人々に尊敬されています。いつまでも尊敬される存在であることは、精神的に大きなプラスとなるでしょうね。

イカリア島(ギリシャ)

エーゲ海の小さな島、イカリア島。人口 8 千人余りのこの島で、90 歳を超えて生きる人は 3 人に一人。それだけでも十分すごいことですが、認知症がめったに見られないというのはさらに驚きです。ところで、イカリアという名前は、ギリシア神話の「イカロス」に由来するとか。「昔ギリシャのイカロスは、ロウで固めた鳥の羽根、両手に持って飛び立った……」というあの歌です。イカロスは、高く飛びすぎたので、持っていた羽根が太陽の熱で溶けてしまい、海に墜落して死んでしまうのですが、それがイカリア島近くの海だったということです。

地中海式ダイエットは、今では日本でもよく知られるようになりましたが、この地域では伝統的な食事法です。 地中海ダイエットとひとことで言っても、地域によって違いはあります。イカリア島では、野菜、果物、豆類、芋類を非常に多く食べます。これらを合わせると食事全体の 75 %を占めるほどです。魚は 6 %、肉類は 5 %と、動物性食品は少なめです。オリーブオイルを多用することも特徴となっていますが、これがコレステロールの低下に役立っているとも考えられています。高い抗酸化作用のあるハーブティーもよく飲みます。また牛乳ではなく、ヤギのミルクを飲みます。ギリシャ正教信徒であるこの地域の人々には、食べるものを制限する節食期間があり、この期間には、主に動物性食品を食べません。摂取カロリーを 約 30 %減らせば老化のスピードが遅くなることは、科学的に証明されているようなので、この節食期間もイカリア島の人々の健康・長寿に一役買っているのでしょうね。

イカリア島では、人々は、特に運動はしませんが、畑仕事をしたり、歩いて近所の人を訪ねたり、といった日々の活動で十分体を動かしています。そして、午後には昼寝を楽しみます。これは、ストレスを減らし、心臓を休ませることから、心臓病の予防に役立っていると考えられています。それから、イカリア島の人々もやはり、家族や友人をとても大切にします。

後編につづく

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